糖尿病について
糖尿病のお薬はここ数年開発が進んでおり、お薬の種類は数十種類に及びます。また患者様のご職業や生活スタイルは様々で、ストレスも治療に大きく影響します。専門医師がそれぞれの患者様にあった的確なアドバイスやお薬を選び、患者様にストレスの少ない糖尿病治療を目指しております。
工藤 孝文 
高血糖が体にもたらす危機とは
なぜ「高血糖」を放置するとよくないのでしょう?究極的には「血管をダメにしてしまう」からなのです。卵焼きを使った例え話で説明してみましょう。
高血糖で血管に糖の「お焦げ」ができる?
卵焼きを作るとき、砂糖を入れますね。あの絶妙な甘味、大好きな人も多いはずです。ですが砂糖を入れすぎると、焼くときに焦げてしまいます。(「メイラード反応」呼ばれています。)血管の中を流れている血液でも糖が多すぎると同じ現象が起きます。糖が多すぎると血管の壁に「お焦げ」がつくと考えてください。これが「高血糖で血管がダメになる」ということです。

そして高血糖を放置すると、この「お焦げ」がどんどん増えていきます。その結果、血管の内部はどんどん狭くなっていき、最後には血管が詰まって血液が流れなくなってしまうのです。その結果が、糖尿病の三大合併症といわれる「神経障害(しびれなど)」や「網膜症(目のかすみや失明など)」、「腎臓病(尿が出なくなる)」です。これらの病気はいずれも、細い血管の詰まりが原因で生じてます。
高血糖が心筋梗塞や脳卒中の原因に
高血糖を放置して怖いのは、これらの「三大合併症」だけではありません。「脳卒中(脳梗塞)」や「心筋梗塞」になる危険性が高くなります。これらも、血管の詰まりにより引き起こされる病気です。脳や心臓を通っている血管は比較的太いのですが、やはり「お焦げ」が付きすぎると、血管の傷みが進み、詰まりやすくなります。脳卒中はいまや、日本における「寝たきり」の最大の原因です。また心筋梗塞も、心臓というポンプの壁の一部が「死んでしまう」病気なので、心臓の働きが一気に悪くなるケースも珍しくありません。これまで平気だった活動で、息切れを起こすようになる患者さんもいます。そうなると生活はかなり制限されてしまいます。

恐ろしいと感じますか?

でも、大丈夫です。血糖値が下がる簡単な「コツ」について順を追ってお伝えします。これまで私が診察室で、何百人という患者さんを診て成功してきた方法です。ただし今は、もう少しだけ「高血糖」のお話にお付き合いください。
血糖値を下げる目的は「血管の健康を守るため」
ここで皆さんに覚えていただきたいのは、高い血糖を下げる目的が「血管をダメにしない」、言い換えるならば「血管を健康に保つ」ことであり、それにより、合併症を予防する。ということです。

医学の有名な格言に「人は血管とともに老いる」というものがあります。ということは、血管を健康に保てれば、アンチエイジングも期待できるかもしれません。

詳しくは、「リバウンドしない血糖値の下げ方」をお読みください。
「糖尿病」といわれたら?
「糖尿病です」「糖尿病の気がある」であると、医師や看護師さん、あるいは保健師さんにいわれたことはありませんか?

ここでまず患者さんが気にするのが血糖値です。しかし「ヘモグロビンエーワンシー」(以下:HbA1c)という検査も知っておかなければいけません。HbA1cとは血液中の「ヘモグロビン」と「糖」がくっついているもので、過去1~2ヶ月の血糖値を反映しています。

血糖値は検査前の食事によって影響されます。それに対し、HbA1cは過去1~2ヶ月の平均的な血糖値をみているので、検査前の食事には、影響されません。HbA1cが高いということは、血糖値が普段から高いということを意味し、その日、その瞬間のデータである血糖値より、過去1~2ヶ月の血糖値の平均が分かるので血糖値よりHbA1cの方が情報量が多いともいえます。ですから、患者さん自身、血糖値だけでなく、HbA1cも必ずチェックするようにしてください。
【 検査結果の例 】
①例えば、普段の食事では、不摂生をしているとします。病院で検査を受診する数日前から、生活を見直すと、一時的に血糖値は下げることができます。しかし、HbA1cは普段の血糖値の平均を反映しますので悪い結果が出ます。

②一方、普段の生活で、食事・運動療法を守っていれば、前日に飲み会などで食べ過ぎた場合でも、飲み会の影響で血糖値は上がりますが、HbA1cは、普段の規則正しい生活が反映されて、良い結果となります。
つまり、HbA1cから、医者がみれない患者さんの自宅での生活習慣が想像できるわけです。

その「ヘモグロビンA1c」ですが、とっておきの覚え方があります。
「体温」に例えて次のように考えてください。

「6%:平熱(36℃台)、7%:微熱(37℃)、8%:高熱(38℃)」です。つまりヘモグロビンA1cが6%だったら、体温36℃と同じように特に問題ありません。
7%は微熱。ちょっと辛いけど寝込む程ではない。8%は38℃ですから、薬を飲むか医師に診てもらったほうがいいでしょう。
※日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド2018-2019」より引用
http://www.jds.or.jp/modules/education/index.php?content_id=11
ここで先ほど説明した「血糖とお焦げ」の話を思い出してください。

実はこの7%の「微熱」の時点で、まったく自覚症状がないにもかかわらず、すでに血管には「お焦げ」が付き始めているのです。すなわち、血管が健康でなくなりだしています。この「微熱」の時点から血糖値を下げたほうが、失明や心筋梗塞などの合併症を遠ざけることができるのです。

糖尿病は当初は、自覚症状がありません。しかし「血糖とお焦げ」「ヘモグロビンエーワンシー(HbA1c)」の話を知っておくことで、自分の糖尿病の状態が分かり、治療のモチベーションのアップにもつながります。「なにも症状がないから大丈夫」「クスリを飲んでるから大丈夫」では決してありません。早速、自分のHbA1cをチェックして、お焦げ(血管の詰まり:動脈硬化)の状況を確認しましょう。